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北海道歯科医師会学会での一般講演「人工歯根の歯根膜形成における考察」

5月11日
読了時間: 3分

2025年8月24日に開催された北海道歯科医師会学会にて、当院院長小川優が一般講演に登壇しました。

講演テーマは 「人工歯根(Artificial Root)の歯根膜形成における考察」

当院が特許を取得している人工歯根療法について、基礎医学から臨床医学にいたるまで総合的な内容の発表を行いました。


【歯根膜について】

はじめに歯根膜についてお話しします。

歯根膜とは、天然歯の根(歯根)と骨(歯槽骨)の間に存在する、コラーゲン線維を主体とした微小関節です。

この組織には大きく2つの役割があります。

①食感を感知するセンサーとしての役割

②毛細血管を通じた局所免疫の維持

歯の噛み心地や守りの機能を担う、非常に重要な構造です。


【補綴治療と歯科インプラントの歴史】

失った歯を補う治療を 補綴治療(ほてつちりょう)と呼びます。

従来は入れ歯や、両隣の歯を削って連結冠(ブリッジ)をかぶせる方法が一般的でした。

その後、1952年にチタンと骨が結合する現象が発見され、1980年代には歯科インプラントが世界的に普及しました。インプラントの大きな利点は、両隣の歯に負担をかけずに欠損部を補えることにあります。

 しかし同時に、骨と直接結合するため歯根膜を持たず、次のような課題もあります。

  • 天然歯との噛み合わせに長期的なずれが生じるリスクがある

  • 局所免疫が弱いため、インプラント周囲炎から顎骨炎へ急速に進行するリスクがある

  

【人工歯根療法とは】

人工歯根療法は、東京大学の西原克成先生によって開発された治療法です。

ちょうど歯科インプラントが広まり始めた1980年代と同じ時期に、学会や論文で発表されました。その最大の特徴は、天然歯と同じように歯根膜を獲得できることにあります。

 これにより、以下のような利点が得られます。

  • 局所免疫の回復

  • 咀嚼時の食感(噛み心地)の回復

  

【歯根膜獲得のメカニズムと進化学的考察】

今回の講演では、人工歯根における歯根膜獲得の仕組みについて詳しい解説が行われました。生物進化の観点から見ると、爬虫類や鳥類の歯は基本的に歯根膜を持たず、骨と直接結合しています。これは歯科インプラントと同じ様式です。

ところが例外もあります。例えばワニは爬虫類でありながら歯根膜を持つ生物です。

この同類の中での例外に、人工歯根療法の理論的ヒントが隠されています。

さらに近年では、歯根膜の成熟に関与する分子としてテノモジュリン(腱、靭帯、筋外膜、眼などの低血管組織に存在する膜貫通型のタンパク質)が注目されており、生化学的な研究と臨床研究を結びつけながら進展が続いています。


おわりに

誤解のないようにお伝えしますが、私たちは歯科インプラントを否定しているわけではありません。歯科インプラントには確かな利点があり、同時に欠点もあります。

そしてそれは人工歯根についても同様です。大切なのは、治療法を一方的に良し悪しで分けることではなく、患者さん一人ひとりの症例やご希望に合わせて最適な治療を選択することだと考えています。

当院では、必要に応じて歯科インプラントを選び、必要に応じて人工歯根を選びます。ケースバイケースで適材適所の治療をご提案できるよう努めております。

そして、医療者は 臨床家であると同時に研究者でもあります。重要なのは最新技術をただ導入することではなく、本当に患者さんにとって最良の医療を提供することです。

スタッフ一同、古くからの知見を大切にしながらも、常に学び続け、最善の治療をお届けできるよう研鑽を重ねてまいります。



 
 
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