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発達と栄養

脳の特性と口の健康のつながり

ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)などの方は、脳の働きや感覚の特性により、歯の健康を保つことが難しくなりやすい傾向があります。その理由は不注意・感覚過敏・生活習慣・薬の影響など、複数の要素が複雑に関係しているためです。

ADHD(注意欠如・多動症)と歯の健康

不注意によるセルフケアの困難

ADHDの方はやるべきことを後回しにしてしまう、同じ行動を続けるのが苦手といった特性から歯磨きの習慣化が難しい傾向があります。磨き残しが多い、歯磨きや定期的な歯科受診を忘れてしまうことで、虫歯・歯周病・口臭が起こりやすくなります。​

 

甘いものへの依存

ADHDでは脳内のドーパミンが少ない傾向があり、甘いものを食べて快感を得ようとすることがあるため、砂糖摂取が増え虫歯のリスクが上昇します。

 

薬の副作用

ADHD治療薬は、副作用として口の乾燥(唾液分泌の低下)を引き起こすことがあります。唾液は虫歯菌を抑える重要な防御因子なので、乾燥により虫歯リスクがさらに高まります。

当院では、できるだけ短時間でわかりやすい説明を心がけています。一度に多くのことは行わず、一つずつ順番に進めることで、集中しやすい環境に配慮しています。診療の流れを事前に説明し、できたことをしっかり褒めながら、前向きに通院できるよう努めています。定期的にお口の状態を確認し、保護者の方と相談しながら、ご家庭で続けやすいケア方法もご案内しています。

ASD(自閉スペクトラム症)と歯の健康

感覚過敏・鈍麻

ASDの方では歯ブラシの刺激が痛い、音やにおいが苦手などの感覚過敏がよく見られます。一方で、痛みに鈍いケースもあり虫歯が進行しても気づきにくいこともあります。そのため、歯磨き自体を嫌がったり歯科治療を拒否したりしやすく、結果的に口腔トラブルが重症化しやすいです。

 

歯ぎしり・食いしばり

ASDでは緊張やストレスを感じやすく、それを解消する手段として歯ぎしりや噛みしめが出ることがあります。これが長期化すると、歯のすり減り、顎関節症の他、頭痛や肩こりを引き起こすことがあります。

 

食のこだわり

特定の食感や味しか受けつけないなど食事に強いこだわりを持つ場合、柔かい・甘い食べ物中心になりやすい為、噛む刺激が少なく虫歯リスクが高いという問題も見られます。

当院では、まずは診療室の雰囲気や器具に少しずつ慣れることから始めています。状態に合わせて段階的に進め、不安や苦手な刺激に配慮しながら、短くわかりやすい説明を行います。また、保護者の方と相談し、ご家庭での歯みがきや通院方法についても一緒に考え、無理なく治療を続けられるよう取り組んでいます。

脳を支える栄養と注意したい食品の関係

ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)などは、脳の発達や神経伝達の仕組みが生まれつき異なる特性であり、食事によって治るものではありません。しかし、食事内容が脳の働き・感情の安定・集中力に影響を与えることは多くの研究で示されています。脳の特性を理解しつつ、食事でサポートすることが大切です。

オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)

​脳の細胞膜の約30%はオメガ3脂肪酸で構成されています。DHA・EPAは神経を柔軟にし、情報伝達をスムーズにします。ADHDやASDでは、血中オメガ3濃度が低い傾向があり、補給により集中力・落ち着き・社会的反応性が改善する報告があります。

  • サバ・イワシ・サンマなどの青魚を週2〜3回以上摂る

  • えごま油・アマニ油を生で利用(加熱に弱い)

タンパク質

鉄分の不足

鉄は、脳内のドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を作る材料です。ADHDの方では、血中のフェリチン(貯蔵鉄)が低いケースが多く、不足すると注意力・やる気・記憶力が低下しやすくなります。

  • 肉類(特に赤身肉)、レバー、魚、大豆製品、緑黄色野菜を意識的に摂る

  • 医師の指導のもとで鉄サプリメントを検討する

鉄分

亜鉛の不足

亜鉛はドーパミンやセロトニンなどの合成・分解に関わるミネラルです。不足すると、感情のコントロールや集中力の維持が難しくなることがあります。研究では、ADHDの子どもにおける血中亜鉛濃度の低下が一貫して報告されています。

  • 卵、赤身肉、魚介類、ナッツなどをバランスよく摂る

  • サプリメントを使う場合は、医師の監修下で使用する

亜鉛

砂糖(精製糖質)

砂糖を多く摂ると血糖値が急激に上下し、集中力の低下や気分の不安定さにつながることがあります。ADHDでは脳の報酬系の働きの特徴から、甘いものを強く求めやすい傾向があるとされています。一時的に満足感が得られても、その後はさらに甘いものが欲しくなるなど、集中力や気分の安定に影響する悪循環につながることがあります。

  • 甘味飲料・お菓子を控える

  • 白米・白パンより玄米や全粒粉など緩やかに吸収される糖質を選ぶ

ジャンクフード

植物油脂・ショートニング(加工油脂)

植物油脂やショートニングには、オメガ6脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含むものがあります。現代の食生活では、オメガ6脂肪酸に偏りやすく、オメガ3脂肪酸とのバランスが崩れがちです。この偏りは体内の炎症を促し、脳の働きや感情の安定、注意力にも影響する可能性があると考えられています。

  • 加工食品・スナック菓子・揚げ物を控える

  • オリーブオイル・魚油・えごま油など自然で抗炎症的な油に置き換える

グルテン(小麦タンパク質)

グルテンは、小麦などに含まれるタンパク質で、パンやパスタなどに多く含まれています。一部の人では腸に炎症を起こし、腸のバリア機能の低下を通じて脳や免疫に影響を及ぼす可能性が指摘されています。ASDやADHDでは、グルテンを控えることで症状の改善がみられたという報告もありますが、すべての人に当てはまるわけではなく、個人差があります。

  • パン・パスタ・クッキーなどを控え、米やそば・玄米などを主食にする

  • 医師の指導のもとでグルテンフリー食を試してみる

人工添加物(着色料・保存料など)

人工の着色料や保存料の一部は、神経を刺激し多動性を強めることが報告されています。代表的な研究にサウサンプトン研究(2007, 英国)があり、合成着色料を摂取した子どもに多動・落ち着きのなさの増加が見られました。神経が敏感なADHDやASDの方では、こうした化学物質が行動や感情に影響する可能性があります。

  • 無添加、保存料・着色料不使用と書かれた食品を選ぶ

  • 加工品よりも自然な素材を使った食事を心がける

発達の特性は食事だけで改善するものではありません。しかし、食事は脳の働きや体の状態に大きく関わっており、偏った食生活などは、炎症や血糖値の変動、栄養不足を通して脳の働きに影響を及ぼす可能性があります。一方で、鉄・亜鉛・オメガ3脂肪酸などの栄養を意識した食生活は、落ち着きや集中力、気分の安定を支える一助となります。療育や薬物療法とあわせて、食環境を整えることも大切です。

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